高校選手権R16
東福岡vs市立船橋

選手権は3回戦にして早くもクライマックス。
夏のインターハイ決勝と同カード、東福岡と市立船橋の一戦が実現。
プレミアリーグでも上位に食い込み、名実ともに高校サッカー界のトップに君臨する両チームの対戦。
会場はフクダ電子アリーナは、キックオフ1時間前にはすでにメインスタンドの9割がた埋まるほどの注目度の高さ。開始時にはバック、ゴール裏含めほぼ満員に。
東福岡高校
プレミアリーグWEST:2位
高校総体:優勝
今大会は、
1回戦:vs 遠野(岩手) 3-0
2回戦:vs 新潟明訓(新潟) 3-1
今シーズン2回目の観戦。
マリノスカップ vs横浜F・マリノス
GK
1 脇野 敦至 3年 183/67 West Kids duel FC
DF
2 林 雄斗 3年 170/67 レオーネ山口
5 福地 聡太 3年 183/76 ヴィクサーレ沖縄
13 小田 逸稀 2年 173/68 サガン唐津
15 児玉 慎太郎 2年 178/65 レオーネ山口
MF
4 鍬先 祐弥 2年 176/68 長崎南山中
8 橋本 和征 3年 170/56 ファジアーノ岡山
10 中村 健人 3年 171/65 UKI-C.FC
11 三宅 海斗 3年 173/63 倉敷市立北中
24 高江 麗央 2年 173/62 ロアッソ熊本
FW
9 餅山 大輝 3年 184/72 ルーヴェン福岡
ーーーーーーーー餅山ーーーーーーーー
ー高江ーーーーーーーーーーーー三宅ー
ーーーー橋本ーーーーーー中村ーーーー
ー小田ーーーーー鍬先ーーーーー−林−ー
ーーーー児玉ーーーーーー福地ーーーー
ーーーーーーーー脇野ーーーーーーーー
56分
24 高江→
6 藤川 虎太朗 2年 173/60 サガン鳥栖
2015年U-18日本代表候補/脇野
市立船橋高校
プレミアリーグEAST:4位
高校総体:準優勝
今大会は、2回戦からの登場。
2回戦:vs 米子北(鳥取) 3-0
今シーズン9回目の観戦。
プレミアイースト1節 vsコンサドーレ札幌
プレミアイースト6節 vs流経大柏
プレミアイースト8節 vs柏レイソル
高校総体3回戦 vs久御山
プレミアイースト11節 vs大宮アルディージャ
プレミアイースト15節 vs流経大柏
高校選手権千葉準決勝 vs中央学院
高校選手権千葉決勝 vs流経大柏
GK
1 寺尾 凌 3年 182/71 FCトッカーノ
DF
3 古屋 誠志郎 3年 160/55 船橋市立八木が谷中
4 杉岡 大暉 2年 178/73 FC東京深川
5 白井 達也 3年 176/63 横浜F・マリノス
7 原 輝綺 2年 175/63 AZ´86東京青梅
MF
2 金子 大毅 2年 172/58 FCトッカーノ
6 椎橋 慧也 3年 176/68 船橋市立八木が谷中
8 押尾 大貴 3年 173/60 レイソルA.A.TOR
9 高 宇洋 2年 172/64 川崎フロンターレ
11 工藤 友暉 3年 172/56 クラッキス松戸
FW
12 矢村 健 3年 164/60 横河武蔵野FC
ーーーーーーーー矢村ーーーーーーーー
ー工藤ーーーーー−高−ーーーーー押尾ー
ーーーー椎橋ーーーーーー金子ーーーー
ー古屋ーーーーーーーーーーーーー原ー
ーーーー杉岡ーーーーーー白井ーーーー
ーーーーーーーー寺尾ーーーーーーーー
51分
6 椎橋→
10 永藤 歩 3年 168/64 順蹴F.A.
75分
8 押尾→
16 西羽 拓 2年 163/59 アントラーズつくば
78分
12 矢村→
14 太田 貴也 2年 172/63 JSC CHIBA
ベガルタ仙台内定/椎橋
モンテディオ山形内定/永藤
2015年U-18日本代表候補/永藤
2015年U-17日本代表/杉岡
試合形式は40分ハーフ。同点の場合は延長なしの即PK戦。
市船はエース10永藤歩が負傷明けでベンチスタート。
サイドアタック対策で、ボランチが本職の7原輝綺を右SBに配置している。
東福岡もレギュラー格のインサイド6藤川虎太朗がベンチスタート。
序盤は緊張感漂う静かな立ち上がり。
若干浮足だっているのは市船か。普段見られないようなトラップ、パスの乱れが生じる。
これに対し、臆さない東福岡は11三宅海斗、8橋本和征がそれぞれミドルシュート。
ゴールを脅かすものではなかったものの気持ちの現れたプレー。
ファーストチャンスは市船。
4分、カウンターから11工藤友暉が運びタメをつくる。
ギャップに走り込んだ8押尾大貴へスルーパス。
エリア内侵入、左足でシュートを狙いますがゴールわずか右。
冷静さを取り戻した市船が早速決定機をつくる。
次のチャンスはまたも市船。
6分、中盤での激しい守備でボールを刈り取る。
8押尾大貴が一枚剥がして意表をつくロングシュート。
枠内へ飛んだボールは、GK1脇野敦至の手に収まったものの慌てさせる。
さらに市船は8分、最終ラインから5白井達也が一気に前線へフィード。
これを11工藤友暉が落とし、受けた3古屋誠志郎からのミドルパス。
12矢村健がライン裏へ走り込むも、飛び出した1脇野敦至がパンチングでカット。
しかしこぼれを再び矢村が拾い、落としを2金子大毅がミドル!
これを東福岡4鍬先祐弥が手に当ててしまう。
主審は一旦PKを指したが、その後覆されエリア手前ギリギリのFK。
名手11工藤友暉が直接狙うが、壁に入った味方にぶつけてしまいゴール上。
ここまでの市船優勢の源泉は中盤での鋭い守備。
キャプテン6椎橋慧也は抜群のポジショニング。
東福岡のキーマン10中村健人、11三宅海斗がトラップした瞬間まで姿を消し、
顔をあげた瞬間に激しく潰し仕事をさせない。そこからの繋ぎも的確。
18分、市船は左サイドから押し込む。
密集の中、9高宇洋が素晴らしいダイレクトプレーで自らエリアに侵入。
対面の5福地聡太を剥がしかけるが、福地もここは粘ってクリア。
続く市船のペース。
21分、4杉岡大暉がドリブルで持ち上がり一人剥がして前線へスルーパス。
ダイアゴナルに走り込んだ8押尾大貴は見事なスルー。
フリーになった12矢村健が横スライドで剥がしシュート。
しかしここは1脇野敦至が距離をつめてセーブ。
こぼれを再び矢村がつめるが、こちらも脇野が再びブロック。
機動力と決断に優れる脇野の攻守で先制点を許さない。
25分、 市船は中盤でのパス回しから今度は右サイドに展開すると、
8押尾大貴のアーリークロスに12矢村健は空振り。
しかしファーに流れたボールを3古屋誠志郎がダイレクトで狙うが、ここはDFがブロック。
ウイングが推進力を奪われ防戦一方の東福岡だったが、
28分、左サイドのスローインからバウンドが変わりDFと入れ替わった9餅山大輝が縦に突破。
シュートフェイントで追ってきたDFを剥がし、右足シュートに持ち込むが、
さらにフォローに来た7原輝綺に寄せられ、ここは打たせてもらえず。
東福岡の最大のチャンスは35分。
中盤で得たファウル後の小競り合いで一旦ゲームの緊張が途切れた隙をつく。
リスタートで市船ラインの裏へロングパス。
これに9餅山大輝が抜け出しエリア手前から左足で狙う。
これを市船1寺尾凌が超反応し指で掠める。
ボールはゴールに向かって転がり続けるが、わずか右へ。
両チームGKの攻守が飛び出し引き締まったゲームに。
前半最後のチャンスは市船。
38分、12矢村健が右サイドで粘ってボールを奪い繋ぐ。
抜け出した9高宇洋が深く抉ってマイナスの折り返し。
11工藤友暉がダイレクトで狙うが、DFがブロック。
あっという間の40分が終了。
スコアレスの展開も、中盤・サイドの守備が巧くはまっている市船が優勢か。
攻撃でも前4枚のパス回しによる局面打開が機能し、
11工藤友暉のタメから8押尾大貴のギャップに走り込んで自らあるいはスペースをつくるオフザボールの動きが光る。
東福岡も1脇野敦至と最終ラインが要所で厳しく対応。
攻撃もこのままでは終わるはずはなく、後半流れはどちらに転ぶか。
後半、開始から中盤での激しい潰し合いが続きます。
最初のチャンスは東福岡。
46分、前半押さえ込まれていた11三宅海斗が緩急で一人を剥がし、25m地点から強烈ミドル。
これはキーパー1寺尾凌の正面をつく。
鋭さを増す東福岡の攻撃に対し、市船は4杉岡大暉、3古屋誠志郎が連続して警告を受ける。
まず動いたのは市船。
50分、エース10永藤歩をなんと中盤の守備で効いていた6椎橋慧也に替えて投入。
朝岡監督の思い切った采配(椎橋は負傷?)。
永藤は最前線に入り12矢村健が右サイド、8押尾大貴がインサイドへ。
対する東福岡も54分、6藤川虎太朗を投入。
そして市船の決定的チャンスが訪れる。
55分、ハーフラインからのセットプレー。
11工藤友暉が強烈に弧を描き落ちるボールを蹴り込む。
走り込んだ4杉岡大暉が頭で合わせるもクロスバー直撃!
先制点を奪うことができない。
市船は12矢村健が引き続き半端ない貢献度。
最終ラインへの激しいチェイスと、前線へのフィードを粘り強くキープ。
小柄ながら体が強く、屈強な東福岡DFにも当たり負けしない。
しかし市船は60分過ぎから少し運動量が落ちてきたか。
攻撃が10永藤歩への縦パス中心になり、怖さがなくなってしまった感も。
65分、市船はカウンターから12矢村健、10永藤歩と繋ぎミドルもDFがブロック。
続く68分にも、最終ラインからのビルドアップから永藤が受ける。
横へ動かして自らコース作り倒れざま強烈ミドル。
しかしこれはゴール左へ外れてしまう。
その後は両チーム攻めあぐね、あっという間に残り時間は5分に。
78分、市船は右サイドを押し込む。
スローインから16西羽拓がDFの股を抜き深く抉る。
グラウンダーのクロスは中央10永藤歩には惜しくも届かず。
AT提示いっぱいの80+3分。
市船は10永藤歩が一人で30m近くを運んで右サイドでコーナーを得る。
11工藤友暉のニアへのキックも押し込めず。
ハイレベルな両者による戦いは、
共にゴールを割ることができずスコアレスでPK戦へ突入。
東福岡の先攻で始まったPK。
一人目東福岡10中村健人、市船3古屋誠志郎が共にキーパーの逆をついてネットを揺らす。
二人目東福岡8橋本和征が決めたのに対し、市船11工藤友暉がまさかの失敗。
助走のテンポをずらしたものの、左隅へのキックは1脇野敦至が横っ飛びセーブ。
その後4人目まで全員が決め、
これで決めれば勝ちとなる東福岡5人目のキッカーは、今日は見せ場が少なかった11三宅海斗。
市船は絶体絶命のピンチを迎えるが、左隅への強烈なキックは1寺尾凌がビッグセーブ。
雄叫びをあげる寺尾に対し、崩れ落ちる三宅。一気に市船に流れが傾く。
そして後攻市船の5人目は、2年生4杉岡大暉。
左隅へのキックは、読んでいた1脇野敦至に弾かれネットを揺らせず。
この瞬間、頂上決戦が決着。
厳しい内容ながらも要所を締めた東福岡が、インターハイに続いてPKを制し、準々決勝に駒を進めた。
頂点に君臨するチーム同士の対戦にふさわしい、非常にレベルの高いゲームだった。
スコアレスに終わった、更にはきれいな攻撃の形が限られていたのは、
局面局面で高次元の攻の仕掛け、守の仕掛けがぶつかりあったがゆえ。
逃げ腰のプレーは一切なく、緊張感に満ち溢れた濃厚な80分だった。
市立船橋は、あれほど強力な東福岡の展開力、サイドの破壊力を封印。
全てのプレーヤーの守備時のポジショニング、読み、状況判断、集中力が卓越しており、
守備固めではなく積極的な守備で抑え込むのは、このチームにしかできない芸当だろう。
今日は右サイドでの出場となった7原輝綺は、縦への突破を狙う相手に素早く体を入れ、
その後の繋ぎもしくはGKへの戻しなど状況判断が素晴らしかった。
3古屋誠志郎は、東福岡11三宅海斗にほとんど仕事をさせず。
トリッキーな動きを全て読み切り、彼に負けない瞬発力で対応しきった。
2金子大毅は、ボールを度々刈り取って思い切りのいい攻め上がりも披露。
レギュラーに定着してわずかにも関わらず、この最高レベルのゲームでも遜色ないプレーぶり。
市船のインハイ後の積み上げは、間違いなく彼だった。
攻撃では、精度の高いビルドアップから、
前線の秀逸なオフザボールで生まれたギャップを、パス交換あるいはミドルパスで突いていく。
相手の隙を見極める視点、そしてそれを逃さない技術の高さが伺える非常にレベルの高い崩しだった。
一方で、後半10永藤歩が出場してからは、彼のスピードに頼り単調になってしまったものの、
隙をつくだけでなく「真正面から破壊する」、
これが朝岡監督の目指していた最後の上澄みだったのかもしれない。
見事勝利した東福岡は、上述の通り攻撃では抑え込まれたものの、
その分普段フォーカスの当たらない守備も高いレベルにあることを実証した。
前半、崩しかけられてから最後の最後で寄せる速さ、潰す巧さはさすがだった。
後半も10永藤歩、12矢村健のパワフルなチェイスに対し、高い集中力と鍛え上げられたフィジカルを存分に発揮して対抗。
特に左サイドバック13小田逸稀と矢村のマッチアップは迫力満点だった。
そして、これまで多くのチームを葬ってきた市船のCKを難なくクリアし続けたチームを私は見たことがない。この大一番に勝利した今、間違いなく頂点に立てるチームだと思う。
改めて、市立船橋の選手権は3回戦敗退という結末に終わった。
この結果を切り捨てる人もいるだろうし、本人たちも歩みを否定してしまうかもしれない。
しかしこの一年をいくらか見せてもらった一人として、
本当に素晴らしいチームだったことをしっかりと残しておきたい。
観衆を感嘆させられるほどの集中力、攻守に可変するシステムなど高い戦術性、
展開に応じたゲームコントロール、シーズンを通しての積み上げ方。
素材に恵まれたチームはもっとあったと思うが、
これほど一人ひとりが成長し、その個が見事に連動し、崇高な高みを目指したチームはなかった。
「2015年度の市立船橋」は素晴らしいチームだった。本当にお疲れ様でした。
全国高校サッカー選手権 3回戦
東福岡高校 0-0(0-0)PK4-3 市立船橋高校
@フクダ電子アリーナ